人工知能 AIをテーマに、技術内容と主に生産システムに導入する際の課題や事例、リスク解説する。
進化し続ける機械
”機械”を道具のひとつして広く定義するならば、機械の歴史は人類の歴史と同じくらい長い。大古の時代より人類は道具を作り、使い、そして自分たちの生活を豊かにしてきた。科学・技術の進歩に伴って、機械は今日もなお高度化・知能化を続けている。
AIとは何か?
AI(Artifical intelligence、以降は単にAIと表記する)という言葉が生まれて久しい。この言葉を耳にしない日がないほど、最近では身近な技術である。AIの定義は、人や文脈によって定かではない。ここでは「人間の知能や行動を自動化した技術や機械」として定義したい。昨今「AI」と謳われた製品やサービスがあるが、単に宣伝文句として使われていることが多い。宣伝文句の踊らされることなく、どのPhaseのAIなのか昨日を調べてみるとよい。
以下、AIの技術進化の段階をPhase1~4に分類して解説していく。
Phase1 制御プログラム
制御工学やシステム工学の守備範囲であり、入力と出力が単純な系の制御である。1990年代に「ファジィ制御洗濯機」や「1/fゆらぎ扇風機」と銘打たれた家電が売り出されたことがあったが、予めプログラムされた範疇である。
Phase2 古典的AI
入力と出力の組み合わせが多いシステムも扱うことができる。Phase1 の制御プログラムよりも、複雑な制御が可能となる。代表的なものが「エキスパートシステム」である。知識を大量に蓄積する「知識ベース」と、答えを導く「推論エンジン」の2つから構成される。「推論エンジン」には、「知識ベース」のルール設定が必要となる。例えば、人間社会の例であれば、医学や法曹の専門用語を蓄積し、AならばBといった論理を設定させる。機械自身が学習する機能はない研究対象として有名なのが、オセロやチェスなどの限られたルールの中で、最適解を論理や探索である。
Phase3 機械学習
新しい入力と出力を関連し、自ら学習していく点が特徴となる。データから、「機械」(コンピューター)が自動で「学習」し、ルールやパターンを発見する方法である。教師あり学習・教師なし学習・強化学習の3種類がある。
・教師あり学習:入力データ(教師データとも呼ぶ)と出力データ(ラベル付きデータとも呼ぶ)が揃っており、入力データから出力データを推計する手法である。データ全体を離散値やカテゴリーに「分類」するタイプと、データ全体から予測するために「回帰」するタイプに2分できる。
・教師なし学習:一連の入力データから、データの背景にある隠れたパターンや構造を見つけ出す手法である。データの特徴を捉え、「クラスタリング」や「次元削減」ができる。
・強化学習:教師あり・なし学習とは異なり、最初からデータがあるわけではなく、システム自身が試行錯誤しながら、精度を高めていくため手法である。システムの行動がどれだけよかったのかを報酬として与え、その報酬が高くなるように行動を仕向ける。
Phase4 深層学習
ディープラーニングと呼ばれ、「ニューラルネットワーク」を用いて行う「機械学習」の一種である。コンピュータが大量のデータを分析し傾向を学習する技術であり、特徴の法則化をニューラルネットワークの重みの調整によって実現する。サーバーの処理能力向上、ビッグデータと呼ばれる学習データが収集しやすくなったことで技術が発展した。
ここで、「ニューラル・ネットワーク」というキーワードを用いたが、少し解説する。これは、脳の神経回路の仕組みをコンピュータ上に表す数理モデルである。「入力層」「中間層」「出力層」の階層で構成される。「入力層」で画像や音声などの情報を受け取り、続いて「中間層」で計算を重ね、「出力層」で答えを導く。複雑なもので150以上もの階層に分かれる。
今回は、AIの技術を解説した。次回は、生産システムへ導入する際の課題や事例について述べる。
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参考文献
※ ”機械学習&ディープラーニングのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書” 山口 達輝/著 技術評論社
※ ”はじめての機械学習” 田口 善弘/著 -- 講談社
※ ”「機械学習」と「AI」のはなし” 和田 尚之/著 -- 工学社